Vol.3 経営者の武士道

 戦国の世においては、自分に仕える武士たちは曲者揃いです。われらが大将日本一。そう思えばこそ付いて来てくれている訳ですが、逆に言えば常にそう思わせる努力が必要なのです。少しでも頼りないなと思わせたり、働きに対して正当な評価を怠ったりすると、自分を見限って出ていってしまう事があります。

 この記事を読んでいるあなたが、もし社員を抱える経営者であったならば、その社員が退職してしまった時の苦い気持ちを思い出す事でしょう。

 

 戦国武将も意外と気を使っていたのです。当然ですが部下である武士たちは、立身出世の為に働いています。戦場で武勲を挙げ、その働きを正当に評価してほしいのです。領地(給料)を増やして欲しいし、宝物(ボーナス)だって欲しいんです。

 

 戦国の武将に求められた能力は、自身に仕える武士たちをまとめ上げ、壮大な目標を提示して、しっかりと評価を行う。そう、まさしく現代における経営者に求められる能力であると言えます。現代の経営者は、戦国の武士道にこそ多くを学ぶべきなのです。余談ですが経営者は戦国武将が好きな方が多くいらっしゃいます。そんな経営者の方であれば、特にこの記事を参考にしていただきたいと思います。

 

 戦国の武将を例えるなら、祭りの神輿(みこし)です。神輿と言うものは、煌びやかで立派な物だから担ぎ手がいるのです。ボロボロで薄汚れていれば、誰も担ぎたいとは思わないでしょう。活力や自身に溢れ、健康的な肉体を有している事が絶対条件です。また、部下たちに大きな夢を見させるため、目標をしっかりと提示する旗振り役でもあります。そういった意味で求心力も必要になります。

 武士は心身の鍛錬を重視します。体と言う器を整え、そこに宿る魂を磨くのです。現代においても、経営者は肉体の鍛錬が必要不可欠であると言えます。

 

 また、正しく部下を評価するためには、えこひいきなどをせずに、しっかり一人一人と向き合う必要があります。私の学んだ武士道で大事な教えがあります。それは「中庸」であれという事です。中庸とは、いずれかに傾かず、バランスが取れた状態の事です。

 

 一度心の中庸さを失えば、その胸中は、偏見や思い込みなど良くない心の働きに支配されます。経営者として自信を持つことはとても大事ですが、傲慢であってはいけませんし、常に部下の声には耳を傾けなければいけません。自分でも気付かなかったような、とても優れたアイディアを持っている事もあるからです。

 

 どうせ大した考えはないだろうと決めつけずに、まずはしっかりと耳を傾ける。これは心が中庸でなければなかなか難しい事です。「中庸」であれ、という武士道の教えは、経営者にとって必須の哲学です。

 

 威風堂々。そして大願に向かって部下をまとめ上げ、公正な目を持つ。優れた武将の資質であり、経営者が学ぶべき武士道の哲学です。