Vol.2 戦国武士道

 武士道が時代によって異なる事は前回の記事で述べました。今回はその理由と、どの様に異なるのかを解説していきます。

 武士道は、あえて分かりやすく分類すると二種類あります。戦国時代の武士道と、江戸時代以降の武士道です。そして皆さんがイメージする武士道は、ほぼ間違いなく江戸時代以降の武士道だと思います。

 

 戦国の世が終わり、天下泰平、徳川400年の安泰が江戸時代です。合戦が無くなり、立身出世の道が閉ざされた侍は、城勤めのサラリーマンに相当します。勘定方をご存知でしょうか。城の中でそろばんを弾く、いわゆる経理部の社員です。当然武に秀でていなくても務まりますし、むしろ正確に、実直に業務を遂行する能力が求められます。

 

 戦国時代の武士はどうでしょうか。まず、士官先(勤め先)は自分で探す事が出来ます。最近織田信長と言う武将が勢いあるぞ、となると自ら売り込みに行くのです。そうして役職や活躍の場を得るわけです。その当時戦国の世ですから、当然武に秀でた者が重宝されます。

 また、士官先を自分で探すだけではなく、現在仕えている主が頼りないと思えば、その主君を見限って出てってしまう事さえありました。これを致仕と言います。

 

 分かりやすく現代の状況に例えてみましょう。戦国時代の武士は「フリーランスもしくは契約社員」で、江戸時代以降の武士は「正社員」です。そう考えると、江戸時代以降の武士が、主君に絶対服従で、黙々と業務をこなすだけである様に共感が生まれる方もいるのではないでしょうか。現代においては「社畜」などと言う言葉もありますが、まさしく江戸の武士はブラック企業に勤める正社員です。

 

 江戸時代には合戦がありません。つまり戦場で手柄を挙げて二階級特進の様な大出世はもうできない世の中になったのです。貧乏侍は、内職で笠張や鳥かご作りでもしないと食べていけません。副業に励んでいたわけですね。

 普段の業務はそこまで大変ではなかったでしょうが、最大のブラックポイントとして「切腹」があります。お殿様(社長)に著しく不利益な行いをした者は、強制的に自殺させられるのです。この制度だけでも、世界に類を見ないブラック企業と言えるでしょう。

 

 江戸時代における武士道と言うものは、お殿様(社長)にとって都合の良い、侍(社員)の為の就業規則と言えます。これは、実のところあまり良い物でも、現代における我々にとっても役立つものとは言い難いのです。

 

 では我々にとって真に役立つ「武士道」とは何なのか。それは「戦国武士道」です。

 

 戦国の武士道においては、血を血で洗う戦国の世を生き抜く為の知恵と強さがあります。己の力を頼みに活躍する武士はもちろん、一筋縄ではいかないその武士を一つにまとめ上げる武将のリーダーシップ。どれをとっても現代に生きる我々にとっても求めてやまない能力であると言えます。

 

 本連載においては、この戦国武士道をピックアップし、ビジネスに効く武士道を解説していきます。