武士に限らず、人々の人生は決断の連続です。今日何を食べようかと言う軽い決断から、今後の人生に関わる大きな決断まで、程度は様々でも、毎日何かしらの決断はします。
優れた人の条件に、この決断力があります。自分が何をすべきかはもちろんですが、何をすべきでないのか。こういった戒めを実行できる強さもまた、武士に学べる決断力です。
この、決めるという行為は、ビジネスマンにも重要な事です。そして、決めたことを貫く事は更に重要で、そして難しい事です。
私たちは、安易な道を知らず知らずのうちに歩んでしまいがちです。こうした方が良い、今やった方が良い。と思っても、何かとそれらしい理由をつけて始めません。
思い立ったが吉日
すべきと思えば、すぐに動き出す。その一歩の後に、工夫や改良があればいいのです。
転ばぬ先の杖
とも言いますが、最近では石橋を叩き過ぎて、叩き割ってしまう方が多いのです。まずは行動。武士は不言実行こそ本質として捉えています。
大きな口を叩く前に、行動で示す。まあ自身に発破をかける意味で、先に言ありきでも良いかもしれません。何より大事なのは、行動です。
まず、決断の重要さはご理解いただけたと思います。決断と一口に言っても、その良し悪しも当然あります。良い決断に重要なのが、判断基準です。
この自分なりの判断基準を、美意識、または誇り、はたまた美学と呼びましょう。一流の人間は、この様な自分自身の揺るがない「軸」や「芯」を持っています。
美意識とは、自分自身が、何を美しいと思うかです。どんな振る舞いが立派であると感じるかです。
そういった美意識に沿った振る舞いこそ、他人から見て筋の通った立派な人物に見られる秘訣です。
この、美意識を正すために必要なのが「教養」です。ただ在るがままに、幼児の様な無邪気な心持で美意識を形成しても、とても立派な人物とは言い難いでしょう。美意識の根源となる教養には、王道があります。
伊達政宗と言う武将をご存知でしょうか。独眼竜とも異名を持つ戦国の武人です。戦上手で知られ、奥州にその名を轟かせました。
こう聞くと、さぞかし勇ましく勇敢な人物に聞こえます。もちろんその通りです。ですが、そんな武人としての一面だけではなく、香道にも深い教養を持つ文化人だった点も見逃せません。
茶の湯を嗜む武人はいましたが、香に優れた見識を持つ武人は少なかったようです。それだけ、香は難しいものでもありました。しかし、当時の貴族や教養人の嗜みとして、香道はありました。美意識を正す教養としては、まさに当時の最高峰の一つではないでしょうか。
知識、教養、立ち居振る舞い。こういった技術や知識群は、真に普遍的で、品格と風格を備えた「美意識」を形成する際に大いに役立ちます。
私達にとっても、日々の決断は大事なものです。重要な決断であればあるほど、避けては通れません。
そんな決断を、即座に、そして正しく行うためには、戦国武士の持つ美意識や誇りを今一度見直す事が必要なのです。
武士の決断力。それは確かな教養や誇り、そしてそれぞれの揺るぎない軸や芯から生まれる強さに裏打ちされたものでした。
私は、武術の修行には、そうした軸を、芯を作る効果が最も備わっていると断言できます。
日々を強く、健やかに生きたい現代人こそ、武術の修行を通して、武士道の習得を目指していただきたいと切に願います。