取材日:令和2年2月12日(水)
取材者:埴原有希士
今回のインタビューは、日本の伝統的な衣服である和装に関連する装飾小物の職人さんです。
皆さんも、成人式の為に振袖を身に纏う女性を目にした事はあるでしょう。着物の美しさに目を奪われるかもしれませんが、それらを引き立てる装飾小物も無くてはならない存在です。
今回は、そんな装飾小物の一つである、髪飾りに焦点を当てます。
時期の割には温かい一日で、少し早めに到着したので、横浜の街をぶらり。
都内に住んでいると、なかなか横浜って来ないんですよね。実際、1~2年ぶりな気がします。
都内よりも人の流れが穏やかで、住みやすい都会。そんなイメージを持ちました。
ぶらっと街歩きを楽しんだ後、駅近く喫茶店でインタビュー開始です。
埴原:本日はお時間頂きありがとうございます。インタビューよろしくお願いします。
覆地さん:よろしくお願いします。
埴原:女性の和装となると、知識がほとんどありません。まずは作られている作品について教えてください。
覆地さん:コームやUピン付のかんざし、髪飾りを主に制作しています。コームやUピンとは髪飾り用の金具を言います。成人式で、女性の髪飾りとして使っていただくような商品です。
(実際に商品を見せていただく)
埴原:すごくきれいで華やかですね。大きさもいくつかあるんですね。
覆地さん:一番小さいものは、例えば七五三でも使っていただけますよ。
かんざしは、実は今の流行り的には、年々小ぶりにはなってきています。今の方は顔が小さいので。
埴原:そうなんですか。確かに小顔さんが多いですよね。羨ましいです(笑)
そういえば、会社の名前ですが「覆地造花」というお名前の由来は何ですか。造花と言うからには、最初はお花に関わる仕事がメインだったんでしょうか。
覆地さん:元々は、祖父がコサージュの制作や修理を請け負う会社として始まりました。横浜と言う土地柄も相まって、結構仕事があったみたいです。
私が小学生頃の話ですが、コサージュがものすごく流行った時期があって、それこそ寝ずに作っていたような状況だったそうです。
埴原:なるほど。それで造花と入るんですね。その当時すごいブームだったんですね。
覆地さん:はい。その後、コサージュブームが下火になってしまい、脱サラをして事業を引き継いだ父の代からは、和装小物の商売を始めました。
埴原:そうした経緯があって、これらの美しい商品が生まれたんですね。
美しさは見て分かりますが、価格はちょっと想像がつきませんが、いくらくらいなんでしょうか。
覆地さん:うちが直接販売している楽天のショップでは、大きいもので、5,000~6,000円位で販売しています。同じクオリティの商品としては、相場よりも安く出しています。相場であれば大体10,000円位かな。
埴原:なるほど。これだけ精巧な作りでその値段はとても安く感じます。私も趣味でハンドメイドをやるので、良く分かります。
これらの商品は、やはり成人式の様な特別な日の髪飾りですか。
覆地さん:これだけ精巧に作られている商品は、ほとんどそうですね。
埴原:成人式の装いですが、最近ではとても華やかな着こなしが多いですよね。
皆さんとても美しい装いで、輝いて見えます。
覆地さん:成人式の和装ですが、よくよく話を聞くと、親の御下がりの着物をリメイクしたものも多いそうです。当時バブルの時代ですから、物は凄く良いと。
埴原:なるほど。今の若者は、あまり贅沢を言わないですよね。納得です。
そういったリメイク着物の場合には、アクセントとしての和装小物が重要になりますね。
覆地さん:はい。そんな時に髪飾りで美しく飾ってあげると良いと思います。
後は、これは楽天限定ですが、もう少しリーズナブルな値段の、例えば浴衣に合わせるような、普段使いも出来るような商品を販売しています。
埴原:普段使いの商品良いですね。
私も、普段着としての和装を推奨しています。
覆地さん:実は商品の宣伝の為にインスタをやっているんですが、普段着物っていうハッシュタグがあるくらいで、結構よく見かけますよ。
埴原:結構若い方が多いですよね。本当にオシャレで。ですから、若い方が気軽に取り入れられるような商品は凄く良いですねよ。
新宿の商業施設にも、和のショップなんかも目にするようになりました。
覆地さん:オリンピックの影響もあるんですかね。外国人の方も増えていますね。和の商品は目に付きやすいというのもあると思います。お土産で重宝されていますよ。
埴原:確かにそれはありますね。話は変わりますが、外国の方って何故か忍者が好きな方が多いですよね。不思議です。
覆地さん:忍者、侍のイメージはあるみたいですね(笑)
埴原:普段使いの話しとは少し異なりますが、旅先で着付けをしてもらえるサービスも流行っていますよね。
覆地さん:近くで言えば鎌倉でよく見られますね。
そういえば鎌倉で活動するカメラマンさんが、うちの商品を使って写真を撮りたいと言ってくれたことがありました。
撮影の時には、撮影の時なりの着こなしのポイントなんかがあるみたいで、面白いなと思いました。
埴原:私も着こなしは色々あってよいと思います。基本を押さえておけば、後はオシャレを楽しんでいただきたいですね。若い人と言う話で言えば、若い職人さんはどうですか。やはり減っていますか。
覆地さん:そうですね。私で50歳になるんですが、私で若手な位ですね。昔は問屋さん主催のイベントなど多かったんですが、父親の代でなくなっちゃったかな。
同年代の職人も一人いたんですが、辞めてしまったと聞いています。
埴原:それは残念ですね。
覆地さん:最近ではむしろ趣味の延長として個人販売している作家さんは見かけますよ。趣味とは思えない位素晴らしい作品も多いです。採算度外視の方が多いですが(笑)
埴原:ハンドメイドは私も好きなので、気持ちは分かります。
趣味の方は売れれば良いや位で考えているんでしょうね。
ですがそういった作家さんが居るだけでも、私は嬉しく思います。
注目されていると言えますし、手仕事で作っている方がいるという事実も大事かなと。普段の生活に溶け込む和文化と感じます。
覆地さん:うちの商品は少し特化しすぎているとは言われますが、例えば取付金具を変えれば、バッグに付けて使うのもおすすめです。
埴原:髪に飾るだけじゃない使い道もあるんですね!とても興味深いです。
覆地さん:今流行っているもので、タッセルがあるんですが、それと同じような使い道も良いと思います。
埴原:生産者の方に、そういう普段使いの使い方やコツを発信してもらえると、消費者も安心です。間違ってないんだな、自由に楽しんでいいんだなと思えます。
覆地さん:七五三用であれば、頭に飾るだけでなく、帯に刺したりもよく見かけます。もちろん普段使いでもかわいいと思いますよ。
埴原:私にとっては、女性用の装飾品は未知の世界なので、大変面白いお話でした。
普段使いも出来るアイテムであるという点は、目からウロコですね。
今は結構独自のおしゃれを突き詰めている若い方も多いですから、ファッションアイテムの一つとして、是非、和の美を取り入れて頂きたいなと思います。
そんな企画を行っても面白いかもしれませんね。
本日はインタビューありがとうございました。
覆地さん:こちらこそ、ありがとうございました。
<インタビューの感想>
現代においても、成人式には和装の女性は多く見受けられます。現代に息づく和の美としての髪飾りは、その華やかな美しさが印象に残ります。
手がける覆地さんは、職人気質な風貌で、お写真をお願いしたところ、
「見た目が厳ついからちょっと(笑)」
とおっしゃっておりました。そのギャップも、なんだか私には魅力の一つに感じられました。
ハレの日用に、そして普段使いにも、是非皆様も和の髪飾りを取り入れてみませんか。